相続の開始

 

相続の開始
相続は死亡によって開始します。この死亡には、失踪宣告や認定死亡も含まれます。
相続人は、相続開始の時(被相続人の死亡の時)から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継することになります。
※一定の例外があります。

 

相続人
被相続人の財産上の地位を承継する人を指します。ちなみに死亡した本人は被相続人といいます。
被相続人の血族は次の順位で相続人となります。
なお、被相続人の配偶者は常に相続人となります。
@被相続人の子
A被相続人の直系尊属
B被相続人の兄弟姉妹
この順位が基本となります。
これ以外に代襲相続があります。
相続の開始以前に被相続人の子あるいは被相続人の兄弟姉妹が死亡したり、一定の理由(相続欠格・相続廃除)によって相続権を失った場合、その者の子が代わって相続することになります。これを代襲相続といい、代襲相続する者を代襲者、代襲相続される者を被代襲者といいます。
代襲者は被相続人の直系卑属でなければならないので、養子縁組前に出生していた養子の子は被相続人の直系卑属に該当しないなど、注意しなければならない場合が少なくありません。
そのため、相続人の確定が重要になってきます。

 

法定相続人

 

民法で定められている相続人を法定相続人といいますが、相続には優先順位が決めれらています

 

第1順位 配偶者、子(養子を含む)、直系卑属(孫)
第2順位 親、直系尊属(祖父母)
第3順位

兄弟姉妹 (甥・姪まで)
※代襲相続は1代限り

 

被相続人(お亡くなりになった方)と相続人の関係を図にしたものを相続関係説明図といいます。

 

 

法定相続情報証明制度

 

【法定相続情報証明制度とは】

近年、相続登記が未了のまま放置されている不動産が増加しており、所有者不明土地問題や空き地問題の一因となっている。

 

→そこで、法務省において、相続登記を促進するために法定相続情報証明制度が新設(平成29年5月29日から運用開始)されました。

 

【制度の概要】
相続人が登記所に対し、以下のお書類をはじめとする必要書類を提出する

相続人が生まれてからなくなるまでの戸籍関係の書類等
1の記載に基づく法定相続情報一覧図(被相続人の氏名、最後の住所、最後の本籍、生年月日及び死亡年月日並びに相続人の氏名、住所、生年月日及び続柄の情報)

登記官が上記の内容を確認し、認証文付の法定相続情報一覧図の写しを交付

 

 

【制度の利点】

本制度により交付された法定相続情報一覧図の写しを、相続登記の申請手続きをはじめ、被相続人名義の預貯金の払い戻し等、様々な相続手続きに利用されることで、相続手続きに係る相続人の負担が軽減されることになりました

 

 法定相続情報証明制度が始まる以前は、例えば、被相続人名義の預貯金の払い戻し等を複数の銀行で行う際には、銀行に相続関係説明図と関係者すべての戸除籍謄本の束を提出し、事務手続きが終了したら返却してもらい、そして別の銀行に提出して、また事務手続きが終了したら返却してもらうといった煩雑な手順を行うか、複数の相続関係説明図と戸除籍謄本の束をそれぞれの銀行に提出して事務手続きを同時に行っていました。

 

 関係者すべての戸除籍謄本の束を複数用意するのは費用がかかりますし、手続きの担当部署はいちいち相続関係説明図と戸除籍謄本を照会して相続関係に間違いがないか確認するといった負担がありました。
法定相続情報証明制度が始まったことにより、相続人は認証文付き法定相続情報一覧図の写しを提出すれば、銀行に相続関係説明図と関係者すべての戸除籍謄本の束を提出しなくてもよくなりました。

 

相続手続きに必要な相続財産目録

 
相続財産目録

ご本人(被相続人)が亡くなった時点における、所有財産を全て網羅した一覧表

 

・被相続人が所有していた現預金や不動産、有価証券といったプラスの財産(資産)の他に、借金等の様なマイナスの財産(負債)を全て記載しなければなりません。
・相続財産目録に抜けているものがあった場合、その分相続税のシミュレーションに誤差が生じるだけでなく、隠し財産があれば相続人同士の話し合いで揉め事が生じる可能性があります。
・残された遺族が知らない財産もあります。最近では、紙の通帳を廃止する銀行も増えていて、被相続人がどこの銀行にどのくらいの預貯金を残していたか、携帯やパソコンを調べないとわからないといった事案が増えています。また、月額支払いで会員として利用していたコンテンツの支払いが死後もずっと続いており、止め方がわからないっといったご相談もあります。
・相続財産の調査が難しい場合は、専門職に依頼する方法もご検討ください。

 

遺産分割協議

 

 遺産分割協議書
 故人が残した遺産を相続するにあたり、法定相続分とおりの相続ではなく、相続人同士がお互いに協議して遺産を分けた場合に、そのことを証明するために作成する書類 

 

◆遺産分割を行って協議書を作る時は、相続人全員の署名と実印による押印が必要です。
◆相続人が一人の場合は遺産分割協議書は必要ありません。
◆分割協議は、必ず相続人全員で行わなければなりません。全員で分割協議が行われなかった場合は、その協議は無効になります。
◆相続人に未成年者がいる場合は、その未成年者の代理人が必要になります。
◆遺言書がある場合でも、関係者全員の同意がとれれば、遺言とは異なる分割を行うことができます。その場合にも遺産分割協議書が必要になります。

 

配偶者居住権

 

配偶者居住権とは、残された配偶者が被相続人の所有または二人で共有していた建物に居住していた場合で,一定の要件を充たす場合に、被相続人が亡くなった後も,賃料の負担なくその建物に住み続けることができる権利です。令和2年4月1日に施行されました。民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号。平成30年7月6日成立。)参照。

 

◆残された配偶者は,死亡した本人(被相続人)の遺言や,相続人間の話合い(遺産分割協議)等によって,配偶者居住権を取得することができます。

 

◆配偶者居住権は,第三者に譲渡したり,所有者に無断で建物を賃貸したりすることはできません。

 

◆配偶者は、建物の所有権を取得するよりも低い価額で居住権を確保することができるので,配偶者居住権を取得することによって,預貯金等のその他の遺産をより多く取得することができるというメリットがあります。

 

 

特別寄与制度

 
特別寄与制度(令和元年7月1日施行)

相続人以外の被相続人の親族が、被相続人の療養看護等を行った場合には、一定の要件のもとで、相続人に対して金銭請求をすることができる制度(特別の寄与) (民法第1050条)

 

特別寄与制度も配偶者居住権と同様新しく設けられた制度の一つです。

 

(モデルケース例)

亡き長男の妻が、本人(被相続人)の介護をしていた場合

 

?特別寄与制度が設けられる以前は、相続人(子や孫など)以外の者は被相続人の介護に尽くしても、相続財産を取得することができませんでした。
 長男の妻だからと一生懸命に舅姑の介護をしても、その財産は亡き夫の兄弟が相続してしまい、介護下には長男の妻には分配されないといった問題がありました。
 特別寄与制度導入により、介護を実際に担っていた長男の妻が、相続人(夫の兄弟)に対して、金銭の請求ができるようになりました。

 

特別寄与制度は、相続人でない親族の介護等の貢献に報い、実質的公平が図られることを目的としています。

 

(問題点)
特別寄与料の支払について,当事者間に協議が調わないとき又は協議をすることができないときには,家庭裁判所の調停又は審判の手続を利用することができます

 

 ですが、現実問題として家庭裁判所の調停又は審判の手続きを行うことを考えなければならない状況を想像すると、どうでしょうか?
  親族間で相続について揉めている状況が容易に想像できます。

 

 「相続」が「争続」に変わってします状況です。

 

 自分の子供たちと息子のお嫁さんが争う状況など、亡くなったご本人も望まないと思います。
 自分の介護を一生懸命にしてくれた息子のお嫁さんに金銭的なお礼をしたいと考えるならば、やはり遺言書でご自分の意思を示すことが望ましいといえます。
 (※遺言書で、息子のお嫁さんへの遺贈分を指定できます。)

 

 

 

 

 

 

 

遺留分

被相続人が特定の相続人等に遺産のほとんどを譲るといった内容の遺言を残していた場合など、特定の者にだけ有利な内容の遺産分配がなされた場合に、一定の範囲の法定相続人が自己の最低限の遺産の取り分を確保することのできる制度。遺留分権利者は、受遺者等に遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求できる。

※遺言書を残す場合でも、遺留分の額には注意する必要があります。

 

◆配偶者・子又は代襲相続人・直系尊属のみ
◆兄弟及びその代襲相続人には遺留分侵害額請求権はない
遺留分を算定するための財産の価額に相続人が直系尊属のみの場合は、その相続分の3分の1
 それ以外は2分の1を乗じた割合
◆遺留分を算定するための財産の価額については、専門的な知識が必要になります。専門家に相談するとよいでしょう。

 

例)相続人が配偶者と子2名の計3名の場合 
相続財産(および、贈与財産)が8,000万円の場合
法定相続分は、配偶者4,000万円 子はそれぞれ2,000万円
遺留分侵害額請求で保障される金額:配偶者は2,000万円(8,000万×1/2×1/2)、子はそれぞれ1,000万円(8,000万×1/2×1/2×1/2)の遺留分を取得することが認められる。

 

例)相続人が配偶者と被相続人の両親の場合 
相続財産(および、贈与財産)が9,000万円の場合
法定相続分は、配偶者6,000万円 母親は3,000万円
遺留分侵害額請求で保障される金額:配偶者は3,000万円(9,000万×1/2×2/3)、母親は1,500万(9,000万×1/2×1/3)の遺留分を取得することが認められる。

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